小天(おあま)歴史の旅
- tsuneyoshishirai
- 2018年1月5日
- 読了時間: 3分

この家、どこかで見たことありませんか?宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」で、主人公の堀越二郎が住む、上司の黒川宅で間借りしている建物のモデルとなった建物です。

この建物、孫文の辛亥革命の支援者として知られる宮崎滔天の妻ツチの実家、前田家の別邸と知られる建物です。
今から121年前、夏目漱石が熊本から旅をし、この別邸に逗留しています。

別邸の下には浴場があり、夏目漱石が入浴している時に、湯煙で夏目漱石達が入っているが分からずに前田家の次女「ツナ」さんが入って来て、驚いて飛び出したそうです。その思い出が「草枕」では「画工」と「那美」となって描かれています。この前田ツナは宮崎ツチのお姉さんです。
非人情の美を描いた夏目漱石の初期の傑作「草枕」ですが、この場所を舞台として描かれているのです。

カナダの天才ピアニスト、グレン・グールドも「草枕」を愛読しており、彼がやっていたラジオで第1章を自らが朗読しています。そして、この作品を20世紀最高の作品の1つと言って、彼の死の床には「草枕」が置いてあったそうです。

夏目漱石の「草枕」への旅から113年後、宮崎駿監督がスタジオジブリの社員旅行でこの小天を訪れました。宮崎駿監督も「草枕」の愛読者だったからです。
そして、前田家別邸を訪れ、夏目漱石も座った部屋に喜々として座る写真が残されています。そして、「風たちぬ」の主人公の家を別邸とする案を思いついたそうです。

ちなみに「草枕」は「三角の世界」という題で英訳されています。芸術家の住む世界とは四角い世間の常識という一角が通じない世界なのだという漱石の考え方から取られています。
写真の景色は前田家の墓地からのもので、夏目漱石はこの場所から見た光景を「わが墓」という作品に描いたといわれています。

前田家別邸近くのつづら折りの道をどんどん登っていくと、八久保小学校跡があります。今は無きこの学校は、宮崎滔天の息子、宮崎龍介が卒業した小学校です。
中国革命のため、家庭を全く顧みない父に代わり、家計を支えなければならない母ツチは、子供を実家に預けて働きます。このため、龍介は生まれた荒尾ではなく、ここ小天の小学校を出ています。

この八久保小学校跡の碑は、宮崎龍介の筆によるものです。宮崎龍介は社会活動家、弁護士として活動しましたが、世間的には白蓮事件で有名な歌人、柳原白蓮の夫として有名なのかもしれません。
お食事は那古井館あたりでどうぞ!完全予約制ですが。

熊本県玉名市天水町小天の歴史の旅をご紹介しましたが、先ず最初に「草枕交流館」にお立ち寄りいただいてから、前田家別邸、八久保小学校跡の場所を聞いていただくと確実かと思います。多分、八久保小学校跡の碑とか前田家の墓とか分からないと思います。
【草枕交流館】
所在地 玉名市天水町小天735-1 国道501号線小天温泉バス停から徒歩10分(坂を上り400m先。途中に前田家別邸がある) 開館時間:9:00~17:00 入館料:無料 休館日:水曜日 電話番号:0968-82-4511
有難うございます。でも、僕が住んでいる荒尾市(小天がある玉名市のお隣さんですが)、白蓮の夫(白蓮事件で駆け落ちした相手)、宮崎龍介の生まれた土地なのです。東京で革命のために明け暮れ、家に帰って来ない父、宮崎滔天のために、色々な所を転々として最終的には東京に行ってしまっていますが。
初期の傑作「草枕」是非!青空文庫でも読めます!!作家大岡昇平が指摘するように、国民的作家の漱石は新聞小説を書くようになって民衆に媚び、人間性の深みにまで達していないと言われています。でも、この頃の漱石は誰にも気兼ねなく、媚びることなく書いています。
柳原白蓮の夫 ⁉️ ようやく話が繋がりました。博識ですね。夏目漱石の作品は「草枕」は読んでませんが、他はいくつか読みました。文学少女だった私はノートに書き写して、お手本にしてました。とても綺麗な文体で最高の作家だと思っています。